是非、お薦めしたい芥川賞受賞作
壁 (新潮文庫)
安部公房(著) |
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自分の名前が逃亡をし、それを追いかけるという内容。読書好きで、かつシュールレアリズムが好きな人におすすめ。初心者にはお勧めしない。
序文は、安部公房が師と仰ぐ石川淳が担当。句読点が極端に少なく、日本一美しい長い一文を書くと聞き、石川淳の芥川賞「普賢」を読むも、こっちは難しかった。 作品中、アンドレ・ブルトン先生が出てくる。シュールレアリズムの創始者で、トリスタン・ツァラのダダイズム(ダダ宣言)から派生した。その「シュールレアリズム宣言」も面白い。 |
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猛スピードで母は (文春文庫)
長島有(著) |
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団地で暮らす母と小学校五年生の息子の話。サバサバした性格の母が、軽自動車を乗り回す。本人は、自動車免許を持っていないのに、この話を書いたと言う。
文章が苦手な人にも読みやすく、ユーモアが秀逸で、くすっと笑える。長島さんの作品のなかでは、「タンノイノエジンバラ」もおすすめ。 なお、著者はゲーム好き、マンガ好きで、ブルボン小林というペンネームでも本を出している。私は好きだから読んだが、こちらはゲーム好きではない人にはお薦めしない。 |
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しょっぱいドライブ (文春文庫 (た58-2))
大道珠貴(著) |
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長島有氏に雰囲気が似ている。ひらがなが多い。
34歳のミホと、へなちょこ老人の奇妙な関係。これ以上ないといえるくらいわかりやすい表現で、女性のせつない心の動きが伝わってくる。芥川賞受賞作。 妻はこの軽い感じの文体があまり好きではないみたいだが、私はすごいと思った。選考委員も評価がわかれたという。もてない女性の悲しみがうまく描けていると思うが。。 九州芸術祭受賞作の「裸」もおすすめ。 |
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赤頭巾ちゃん気をつけて (新潮文庫)
庄司 薫(著) |
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サリンジャーが好きなら、ぜったいに読むべき。語り口から好きになる。かつてサリンジャーの模倣が取り沙汰されたが、私はそうは思わない。面白すぎて、中古の本を五冊も買ってしまった。
奥様は世界的ピアニストの中村紘子さんで、この作品に、名前が出てくる。その縁で結婚した。これは四部作のうちの一つの赤で、あと青黒白の三つの作品があるが、これがベストだと思う。 学生時代の福田章二のペンネームで書いた本(昔風の書き方)は三島由紀夫に認められなかったが、この軽い文体は賞賛された。エッセイ集は「ぼくが猫語を話せるわけ」がおすすめ。 |
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されどわれらが日々― (文春文庫)
柴田翔(著) |
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トルストイの翻訳を思わせる硬質な文章。だがカッコイイ。上記「赤ずきん~」と同じで、学生運動を題材にした小説。
幼馴染で、婚約者の「節子」との間で揺れ動く複雑な感情が秀逸。この作品が面白くて、彼の作品を手に入る限り読んだが、これ以上の内容はみつからなかった。(「十年の後」は面白かった) 留学をし、数年かけて書き溜め、この作品を完成させたらしい。 |
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僕って何 (1980年) (河出文庫)
三田誠広(著) |
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これも全共闘時代の話だが、ユーモアたっぷり、書き方も現代風。それになにより、出だしがダントツによくて、最初の数行は暗記してしまった。大学校内の、図書館の壁にもたれかかったところから始まっている。
以前、会社の人に薦めると、大変気に入り、とくに最初の上京についてきた母親に対する冷たい態度の場面で鳴きそうに成ったという。 主人公の大学生が、いろんな運動に巻き込まれドタバタし、付き合う事になるきつい性格でサバサバした玲子との関係がおもしろい。 |
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妊娠カレンダー (文春文庫)
小川洋子(著) |
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姉の出産までの、日記形式の話。読みやすさを基準にしているが、小川洋子さんの文章は、一字一句まで神経が研ぎ澄まされていて、どれも丁寧に書かれている。「ブラフマンの埋葬」にも、それが顕著に現れている。
過去に本屋大賞をとった「博士の愛した数式」は妻のおすすめ。 |
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蛍川・泥の河 (新潮文庫)
宮本輝(著) |
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彼の作品は、いつも読みごたえがある。「力道山の弟」「トマト」「真夏の犬」が面白くて、とっつきにくい印象があったのが消えた。
文章は少々硬しく、内容も主狂うし胃印象があるが、プロットがしっかりして深い味いがある。最後の無数の螢が舞うシーンは圧巻。「力道山の弟」はこれとはまた違う軽い感じで、ユーモラスでありながらテーマも面白いから読みづらいと感じたら、そちらをぜひおすすめ。 |
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「自動起床装置 (文春文庫)
辺見庸(著) |
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出だしが圧倒的に面白い。それだけでも読む価値あり。そのあとの文章は普通に思えたが、自動起床装置を知らない人におすすめ。通信社の仮眠室で人力で人を起こすアルバイトをする男と、その機械との話。 | |
エーゲ海に捧ぐ (中公文庫)
池田満寿夫(著) |
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過激な性描写が物議を呼んだ作品だが、いわゆる官能小説とは一線を画するのは、鋭い言語感覚だからだろう。外国で暮らしていて日本語が話せなくて、言葉が頭の中で溢れてしまっていた作者が、その溢れる言葉の中から選び出した珠玉の日本語で書かれた「性」。一読の価値あり。 | |
受賞作よりも、他の作品のほうが読みやすいモノ | |
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