『かたわら』
小山田浩子(著)
(『新潮』2020年7月号に掲載)
保育園に通う女の子の母親が語り手の小説。
昔飼っていた犬の記憶、子供の頃に殺した虫の記憶、平穏な日常。
全て、なんでもないことで、特にこれといったストーリー展開があるわけではない。
なのに、面白い。細部が面白い。
不可解で時に残酷でもある子供の宇宙を眺めながら、過去に子供だったころの自分の宇宙を振り返る母親の宇宙がある。
平凡な主婦の日常として一括りに片付けられてしまいそうな細部を、ここまで書き切れるかというくらいびっしり淡々と書ききっていて、そしてこれだけ読ませる。小山田浩子さんという作家は、すごいなと改めて思いました。