『枝の家』 黒井千次(著) (『文學界』2019年1月号に掲載)
全国チェーンの大型スーパーマーケットが出来たために寂れてしまった、老舗のスーパーマーケットに出向いた老夫婦のお話。
夫婦は、そもそも買う予定だった台所用品ではなく、一鉢の観葉植物を買って帰りますが…。
短篇小説ですが、細部の描き方がなかなか良かったです。
例えば、妻がどうしても必要だということで買いにいくことになる台所用品が、どんなに説明されても、それがはたしてどんなものなのかよく分からない。誰も名称を知らなかったりで、最後までそれがなんなのか分からないままなのですが、平凡な一家庭用品に過ぎないものが、正体が分からないことで、妙な存在感を持って読めてくるのです。
その他にも、スーパーの中央にある螺旋階段とか、夫婦に鉢植えを売りつける男の存在なんかも、ちょっと気になります。
終盤から、ホラーテイストを醸してくるので、最後まで面白く読みました。