『われはロボット』
アイザック・アシモフ(著)
小尾芙佐(訳)
(早川書房)
本作は、SFの古典的な名作として知られている短篇集です。
”ロボット工学三原則”なるものが示されていることでも有名です。
それぞれの作品は短篇として独立していますが、外枠の部分に出てくるロボット心理学博士のスーザン・キャルヴィンなる女性により、ロボットの長い歴史を紡ぐ作品にもなっています。
子守り用に造られたロボットと少女との無垢な愛情が描かれた第一話「ロビィ」からはじまり、決して順風ではなかった人間とロボットとの関係や、そこで巻き起こる事件の数々が描かれていて、そこを突き詰めると人間と人間を取り巻く世界そのものの姿や問題点が浮かび上がってくる、不思議な作品群であったと思います。
面白いのは、それぞれのロボットに、何となく固有の個性のようなものがあり、とんでもない事件を引き起こしてしまったり人間を窮地に陥れたりするものまでいるのですが、どうにも憎めないというところです。
そもそも、彼らが何らかの問題や事件を引き起こしてしまう要因は、上に述べた三原則が主な原因で、この三原則を前にして、ロボットたちを悩ます選択の非常に難しい問題が提示されるたび、彼らはジレンマに陥ってしまい、予測不能な暴走をはじめてしまうのです。
古典とはいえ、ロボットに関する研究や開発は、これからの時代を確実にリードしていく分野でもあるはずで、そうした先の長い流れをしっかりと見据えた内容である本作は、これからも読み続けられていく名作となるのだろうと思います。