『アイスピック』
佐藤友哉(著)
(『新潮』2018年9月号掲載)
ある秘密を抱えた男が、幼い息子を連れて故郷に戻ってくる。元々雪深い地であるその土地は、男の帰郷に合わせたように、大雪に見舞われる。
男は、一人の女を探していた。 男には、どうしてもその女に会わなければならない理由があった。 |
純文学的な要素より、ミステリーやサスペンスの色合いが濃い作品だったように思います。
文体が持つ暗い静けさには、ひたひたと迫ってくる魅力があると感じました。
幼い息子との距離感は近く、男が追い詰められていく先に見えてくる過去の幸福や、あるいは幸福な形をした悲劇という舞台装置への誘導に繋がっているのだろうと読みました。
ラストにはやや疑問もあるのですが、ミステリアスな緊張感のある作品だったと思います。