僕が殺した人と僕を殺した人

『僕が殺した人と僕を殺した人』

東山彰良(著)

(文藝春秋)

 

 

 

『流』第153回直木賞を受賞した、東山彰良さんの長編小説。

題名はかなりショッキングなものですし、冒頭から猟奇的な連続殺人事件に触れられるので、やっぱり恐い話なのかな、と思ってしまいそうですが、物語は殺人事件の起こったアメリカから、一気に三十年前の台北に移ります。

猟奇的な連続殺人犯(サックマン)の、その背景ともいえる彼の少年時代が小説の中心です。

1980年代の、どこか懐かしいようなアジアの街の一角。そこで繰り広げられる少年たちの出会いや友情が描かれていて、”台湾版スタンド・バイ・ミー”そんな言葉が浮かびました。

やがて少年は、その人生を狂わせることになる、衝撃的な事件へ巻き込まれていくことになります。

小説にはある仕掛けが用意されていて、ラスト付近で明かされることになっており(感の鋭い読者なら途中で気が付くと思いますが)読者を楽しませるエンターテインメントの精神を感じました。

作中の細かなところでは、『流』に登場してたかな、と思われる人物も出てきたりして、かの作品を読んで久しいのですが、いま一度読みなおしてみたくなりました。