『リーダー』
松井周(著)
(『文藝』2018年夏号に掲載)
劇作家であり俳優でもある松井周さんの中篇小説。
ゲームの脚本づくりをする作家チームのリーダーである主人公の男が、職場では締切に追われ仲間の一人が仕事放棄していなくなってしまうという危機的な状況下に追い詰められ、家庭では息子が学校で問題を起こすというトラブルに見舞われる。
職場では上司に、家庭では妻に、駄目だしされてしまうような不甲斐ない男は、息子からもどこか軽く見られている。
かなり古典的なサラリーマンの哀愁漂う設定と、ゲームのキャラクターやシナリオ製作という独特な仕事の世界が上手く融合されていて、楽しい劇のような読み応えのする作品だったかと思います。
一見脇役かに思えた、職場放棄していなくなった男(仁科)の異様性が際立っていて、この男の人物造形が特に面白かったです。