『真夜中の子供』
辻仁成(著)
(『文藝』2018年春号に掲載)
西日本最大の歓楽街である福岡の中洲。
そこに、”真夜中の子供”と呼ばれた少年がいた。 親の愛を知らず、無戸籍で育った少年は……。 |
辻仁成さんが『文藝』に掲載した長篇小説で、かなり読み応えのある内容でした。
ミュージシャンでもあり、映画監督でもあるだけあって、映像にしやすい内容であったように感じました。
以前、無戸籍児童の問題を取り扱ったドラマを観たことはあったのですが、小説で読んだことはなかったので、衝撃でもありました。
歓楽街である中洲で生きる人々の実態がリアルに描かれているのも、読みどころの一つだと思います。
小説の中心人物である”真夜中の子供”の蓮司は、確かに不幸な生い立ちですが、周りの大人たちは彼に対して親切です。
それが根本的な問題の解決になっていないということも言えますが、最終的に蓮司を救ったのは、彼が受けてきた周囲の善意だったはずで、行政や法整備だけの問題ではないんだとも言われている気がしました。