2018年本屋大賞ノミネート作品
『たゆたえども沈まず』
原田マハ(著)
(幻冬舎)
不遇の画家フィンセント・ファン・ゴッホが、浮世絵など日本美術の影響を受けていたことは、けっこう有名な話。
本作は、実在の人物である林忠正という画商を登場させ、その後輩である重吉という人物(おそらく、こちらは架空の人物でしょう)と、フィンセントの弟のテオドルス(テオ)との友情や、ゴッホとの交流を描いています。
ゴッホやその弟と日本人画商との交流は、作者の想像によるフィクションであろうかと思います。
どちらかというと、フィンセントよりも、不遇だった兄を支え続けた弟のテオの人生に焦点が当てられていたのかな、と感じました。
ちなみに、この弟のテオドルスは実在していて、作品にあるように画商でした。
自殺した兄の後を追うように、ゴッホの死の翌年に精神病院で亡くなっています。
なんだか、切ない物語ですが、題名にある「たゆたえども沈まず」というのは、幾多の洪水にも負けずに再建を繰り返してきたパリの力強い精神からきているようで、パリはゴッホの憧れでもあったようです。
ゴッホの目に、パリは、セーヌ川は、どんな風に映っていたのでしょうか。
ゴッホの生涯やその孤独を考えると、とてもやりきれない気持ちになるのですが、そんな彼にも支えてくれようとした弟がいたんだな、と思うと救われる気がします。
Pingback: 2018年本屋大賞ノミネート作品10作の読書感想まとめ | 純文学~猫夏先生の文学新人賞・読書感想