ルイの九番目の命 (ソフトバンク文庫)

『ルイの九番目の命』

リズ・ジェンセン(著)

/池田真紀子(訳)

(SB文庫)

 

 

9歳の誕生日に、両親とピクニックに出かけたルイは、崖から転落し、搬送先のヴィシー総合病院で死亡宣告される。

ところが、病院の遺体安置所で、彼は生き返った。その後、容態は安定するが、意識の戻らない昏睡状態のまま、三ヶ月が経過し、入院していたヴィシー総合病院から、プロヴァンスの私立ロリゾン病院へ転院されることになった。

転院先でルイの主治医となったパスカルは、ルイに付き添う母親のナタリーに、心を惹かれていく。

しかし、そこからパスカルは、ルイを巡る不可思議な事件に巻き込まれていくのだった。

 

ルイはこれまでにも何度となく命に関わる事故に遭遇しながらも、奇跡的に助かってきていた少年で、軽い情緒障害を抱えていました。

”九番目の命”というのは、猫は九つの命を持つ(猫に九生あり)という古くからの迷信からきています。

実際にルイがこれまでに8回死んでいて今回9度目生き返ったという意味ではなく、何度も死にかけた過去を持つルイが、死亡宣告後に奇跡的に息を吹き返した命のことです。

この”九番目の命”で、ルイは昏睡状態の中で生き続けます。

その彼と、母親ナタリーを取り巻く世界に主治医のパスカルが関わっていくことで、次第にある秘密が明かされていきます。

ルイの転落を巡っては、いくつかの疑惑が浮上していました。母親のナタリーの証言では、事故直後から行方が分からない父親のピエールが、転落に深く関わっているという話でした。ところが、警察は、憔悴しきった悲劇の母親であるナタリーにも、疑惑の視線を向けています。

そんな中で、ナタリーに心惹かれてしまう主治医のパスカルは、ナタリーへの疑惑と思慕の狭間に揺れ動きます。

母と子の間に存在する不可思議な精神的関係性が事件の根底に隠れていて、そこを解きほぐしながら展開されていくストーリーは面白かったです。

人間の意識と魂の関係についても、考えさせられました。