1月16日に、第158回芥川賞・直木賞の発表があり、受賞は下記の通りでした。

芥川賞 石井遊佳『百年泥』

若竹千佐子『おらおらでひとりいぐも』

直木賞 門井慶喜『銀河鉄道の父』

 

 

回は、ダブル受賞だった芥川賞の2作の読書感想などを、まとめてみました。

石井遊佳『百年泥』

この作品は、第49回新潮新人賞を受賞した作品です。

インド在住の主人公が、百年に一度の洪水に遭遇するところから物語がはじまります。実際に作者である石井遊佳さんは、インドに在住していて、自身が体験した大洪水が創作のヒントになったようです。

洪水によって堆積した泥の中から、人や物が思い出や、とにかく色んなものが飛び出してくる、という奇想天外なお話で、新潮新人賞の選考委員たちの評価もかなり高かったという印象でした。

インドという、私たち日本人から見て未知の領域の多い大国の底知れなさが、「泥」というモチーフと結びついた時、こんなにも不思議で神がかり的な世界を出現させられるのだな、と感じ入りました。

新潮新人賞の発表の時に、読書感想を書いていましたので、良かったらそちらもお読みください・

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若竹千佐子『おらおらでひとりいぐも』

こちらは、第54回文藝賞を受賞した作品です。そう、今回受賞した2作とも、”新人賞受賞と同時にいきなり芥川賞を受賞”という輝かしい作品なのです。

15年前に夫に先立たれた70代女性の、「老い」と向き合った内容で、標準語の中に時々出現してくる東北弁の味わいが、なんとも言えない魅力となっている作品だったと思います。

主人公の桃子さんの人物造形が秀逸だったのではないかな、とも思います。

いずれやってくる「死」ということを意識しながらも、そこに繋がる様々な「老い」の段階を、未知の領域として興味津々な眼差しで見つめている桃子さんの視点は、軽やかで屈託がなく、時々とても面白い。

この面白さは、読んだ人にしか分からない味わいだと思います。

こちらも、文藝賞受賞時に書いた読書感想がありますので、良かったらそちらの記事もお読みください。

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