『故郷』
松波太郎(著)
(『群像』2017年11月号に掲載)
”き”の発音が上手くできないために、周囲とのズレを感じ続けながら、生きてきた主人公の「クィ」。
そんな彼が行き着いた答えは、”モンゴルに移り住む”というものだったが……。 |
『廃車』で第107回文學界新人賞を受賞して、作家デビューした松波太郎さんの作品。
読み始めてすぐには作品の趣旨を理解することができずに、やや当惑しましたが、混乱から一転、意味が自ずと題名から理解できてきたところで、冒頭の面接官とのやり取りがいかに秀逸に面白いものだったか、ということに思い至りました。
「クィ」が最後に彼の「故郷」とも呼べるような場所に辿り着けたことに、妙な感動すら覚えてしまいました。