『日曜日の人々(サンデー・ピープル)』 高橋弘希(著) (講談社)
大学生の「僕」は、死んだはずの従姉(奈々)から、配達物を受け取る。
それは、奈々が生前に配達日を指定して発送した荷物らしく、開けてみると、奈々の日記のようなものだった。 そこに記されていた内容や人物名などから、一つのウェブサイトに行き着く。 それは、”REM(レム)”と呼ばれる会のサイトで、元々は礒部という不眠症を患っていた男が開設したものだった。 当初は”寝室(ベッド・ルーム)”なる掲示板に、不眠症で悩む人々が集うような場所だったが、そこに様々な心の問題を抱えた人々が加わるようになる。 ”REM”は、マンションの一室を借りて、メンバーがそれぞれの体験や思いを発表し合う集い(”朝の会”)を定期的に開いていて、「僕」は、奈々との関係を隠して、そこへ参加するようになる。 |
2014年に『指の骨』で、第46回新潮新人賞を受賞してデビューした高橋弘希さんの作品です。
物語は、主人公の元に届いた手記(のようなもの)を発端にしています。それは、彼と恋人に近い関係にあった従姉の奈々から送られたものです。
奈々は、すでに自殺していていました。
すぐに主人公は、”REM”というサイトに行き着き、サイトの管理人が主催している集いなどに参加するようになります。
”REM”の集いの一つである”朝の会”でメンバーたちの話した内容が、文字に起こされて『日曜日の人々』という冊子にまとめられていることを知った主人公は、そこに収められた奈々の告白を読みたいと思い、”朝の会”に参加し続けます。
ただの「見学者」として一時的に参加しているだけの意識だった主人公ですが、次第に会の中心的な人物たちと交流するうち、重要な役割を求められていくようにもなります。
それぞれに抱えた問題から、ギリギリの精神状態で生きている人々の切実な「生」が描かれていて、心が揺さぶられました。
極限の精神状態の中で自殺志願者たちを誘う「死」の甘美さと、実際に遂げてしまった後の冷たい現実の落差とが、残酷なほどリアルに迫りました。
ラストは賛否あると思われますが、私は甘すぎるとも残酷過ぎるとも思いませんでした。
極限にまで達した人の、それでも希望を持とうとする無垢な姿が、そこにあると感じました。
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