『父の手紙』
温又柔(著)
(『すばる』2017年9月号掲載)
雑誌『すばる』に掲載された、温又柔さんの掌編小説です。
台湾人の父親と日本人の母親の間に生まれた嘉玲(第157回芥川賞候補作となった『真ん中の子どもたち』に登場する、主人公の友達だった少女と同一人物なのかな? と思うのですが……)の物語です。
家の中で日本語を禁じられ、中国語で話すことを習慣として育った嘉玲(じゃーりん)は、普段は自分が二か国語を話せることを誇りにしているのに、父親と口論になると、中国語を話したくないと言いだしたりします。
そんな娘を見かねて、母親がそっと話聞かせるのが、父親とその父(嘉玲にとっての祖父)との物語――かつて、祖父が息子(嘉玲の父親)に宛てて書いた手紙に纏わる、ちょっと切ないけど胸にじんとくる話――です。
”お父さんとの間に壁はつくらないで”という母親の言葉が印象的。
向田邦子さんの『父の詫び状』を、ちょっぴり思い出しました。