『プロ野Qさつじん事件』
青木淳悟(著)
(『すばる』2017年9月号掲載)
1988年9月――
前年に「電撃引退」をして、世間を騒がせた元球界のスターにして、現在はタレントであり野球解説者のイガワ・スグレは、ニセ札騒動と絡んだ殺人事件に巻き込まれて……。 |
本作は、1988年にカプコンから発売されたファミリーコンピューター用ゲーム『プロ野球?殺人事件!』を下敷きに書かれたもので、著者初の「エンターテインメント作品」、だということです。
現実とゲームの世界が一体化していて、構造的な試みがなされています。
エンタメでありながら、ファンタジーでもありながら、純文学。
かなり時代が古いですし、マニアックな内容でもあると思うのですが、書き手自身がこのなんともしれない「虚構・現実」世界を楽しんでいる気分が伝わってきて、そこがなんともいえない可笑しみと熱量を発散している、という感じでした。
残念ならが私は、『プロ野球?殺人事件!』なるゲームを一度もプレイしたことがないので、内容がどこまでゲームに忠実なのかは分かりませんが、もちろん、予備知識がなくても、十分に面白く読めました。