『かなわない』
植本一子(著)
/タバブックス
写真家である植本一子さんの、日記と散文からなる著作。
震災直後の不安を抱きつつ、二児の母親として育児に奮闘する日々や、夫がいながら別に「好きな人」がいるという状況があったことなどを、赤裸々に告白していて、かなり衝撃的な内容ではあります。けれど、それがごく普通のことのように読めてしまうというところが、実は凄いのかもしれない、と感じました。
子供を愛しながらも、上手く子育て出来ない母親の葛藤があり、そこに潜んでいる心の病気との関連も隠さずに描いていて、日記という形態であるにも関わらず、ただならぬものを感じました。
「母親は、妻は、女は、人は、こうでなければいけない」という束縛の中に、どうしても閉じ込められない感情は、誰の心にもあるはずです。そこに見栄も外聞もなく素直でいるということは、大変なことではありますが、「人間らしい」と、とてもそう思いました。