本作品は、「新潮」(2012年11月号)に掲載されています。
門脇大祐(著)
言葉や構成力のセンスのいい作品で、読みやすかったです。特に、関西弁の会話文が秀逸でした。
登場人物に関するディティールが生き生きしていて、今時の大学生を取り巻く環境が伝わってくるし、冒頭から結末まで、退屈せずに読み通すことができました。ただし、全体を通じての広がりとか深まりは、あまりなかったように感じました。
物語りは、主人公の少年時代の友達から、手紙が届くところから始まります。彼の腸の中にはサナダムシが居て、おまけに四六時中喋っている主人公の声が聞こえる、というのです。シュールですよね。
けれど、作品の面白さはこのシュールな手紙を持て余してしまう主人公の掴みどころのなさだったり、手紙とは全く関係なく展開されていく日常—―問題がありそうで、実際おそらく問題は存在しているのですが、それらは冷めた感覚の中でしか捉えられていきません――とのバランスのいい配置だと思います。
そこにある不満は、無音化された状態だから、物語り中では行間にしか漂ってはいません。一人称ではあるのに、主人公が飄々としていて、自分の内面を独白する、ということをしません。この「飄々として」「掴みどころのない」感じが、文体と一体化していて、それこそ題名の『黙って喰え』にも繋がっているのかな、と読み解きました。
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