本作品は、「新潮」(2009年11月号)に掲載されています。
第41回新潮新人賞受賞作
「神キチ」赤木和雄(著)
一読した印象では、ちょっと不気味な作品だな、と感じました。
ストリー展開や挿入されてくるエピソードの一々は、どこかコント仕立てです。(たしかに「既視感がある」と思ったら、それは小説とかではなく、「エンタの神様」とかそういうお笑い系番組で観たようなコントだったと気が付きました)。
けれど、よくよく考えてみると、これはコントではありません。遭遇する如何にも「狂った」感じの人たちの、すごくアブノーマルな言動や仕打ちに対して、主人公の男は、感情的な反応を一切示しません。ごく当たり前のように次々と提示されてくる「狂った状況」を、完全に受け入れて、上手くその場をやり過ごそうとします。この感じが、読み終わってみて実は一番狂っているのはコイツだった、ということになるわけです。この構図自体は、既に古いのかもしれませんが、あまりそう感じさせないのは作者のパワーや力量だと思います。
ただ、残念なのは途中から少し話のテンポや印象が変わるような書き方にシフトしていて、もう少し一貫性のある構成だとシュールな感じが引き立ったのではないかな……と、個人的には思いました。