『溶ける指』 清水裕貴(著) (『文藝』2019年冬号に掲載)
窓硝子という無機物の視点から、有機物である人間や黴や植物、蟹、海、空…世界を描写していて、物理的に動けない窓が見る小さな狭い範囲の事なのに、鳥肌が立つほどに新鮮な驚きに満ちた小説世界を創り上げています。
静かな視点が眺める景色の中に、事件があり、若い男女の物語がある。その全容を知っているのは、窓硝子である視点であり、過去と現在、夢と現実が重層的に同時空間的に、絡み合い奏で合っている。
こんな小説を読みたかったと思う一作でした。