『行列』津村記久子(著)  (『新潮』2019年9月号に掲載)

無料で「あれ」(はっきりと何かは分からないのですが、多分滅多に日本では展示されることがない海外の美術館所有などの素晴らしい芸術作品ではないかと想像します。小説の中ではひたすら「あれ」という表現でしか書かれていませんが)が見れるというので、12時間待ちになるという行列に並ぶことにした主人公の「私」。

はじめは貴重な「あれ」を只で見れるというので得をした気分でいた私ですが、そのために並んだ行列の中で、思いもしなかった代償を払わされることになります。

人間の本質的な欲望に迫る一作で、短編ですがアイロニーが効いていて現代的でもあり、なかなかの読み応えでした。