『ふたりの証拠』 アゴタ・クリストフ(著) 堀茂樹(訳) (早川書房)

本作は、悲惨な戦時下の世界を変わり者の祖母の元で逞しく生き抜く双子を描いた『悪童日記』の続編です。

主人公の少年たちが突然別れていく『悪童日記』の衝撃的なラストからそのまま繋がっているのですが、『悪童日記』は少年たちが書いた日記という形で書かれていて、登場人物たちに固有の名前が無いのですが、本作では双子やその他の人物たちにもちゃんと名前が与えられていて、三人称の視点から描かれています(『悪童日記』は、「ぼくら」という一人称複数による語りです)。

『悪童日記』の時点から薄々感じていた、もしかしたら双子は一人の人間なのではないのかという疑念が、本作ではさらに深まったという感想です。

いくつもの衝撃的な出来事を淡々と感情を一切交えずに書くという『悪童日記』から継続している文体が魅力的な作品であったとも思います。

行間に隠された謎(秘密)の持ち得る怖さを最大限に引き立てているのはこの文体で、私個人は、どこか柳田國男の『遠野物語』にも通じるものを感じますし、ギリシャ神話なんかを読んだ時にも感じるものにも近いという気がしています。ここに、「物語を物語る」ということの根本的な仕掛け(もしくは秘密)があるのだと思います。