『〆太よ』
原田宗典(著)
(『新潮』2018年2月号に掲載)
金持ちで盲目の青年〆太と、ジャンキー(麻薬に溺れる者)の主人公との友情を描いた、青春物語ともいうべき作品。
原稿400枚にも及ぶ長篇です。
作者の原田宗典さんは、『楽園のカンヴァス』などで知られる、作家の原田マハさんの、お兄さんだそうです。
『おまえと暮らせない』で第8回すばる文学賞の佳作に入選しています。
2013年に、覚醒剤と大麻所持の現行犯で逮捕された、というショッキングな過去があるようで、本作の主人公とも重なって見えます。
青臭いほどに純粋な友情を、よくぞここまで書き上げたな、という熱意のような、必死さが感じられる作品でした。
途中でオウム真理教や、勝新太郎の話が出てきて、むしろ作品のリアリティを(なぜかだ)失くしてしまったような印象で、残念でした。
二つくらいの文をくっつけて、一つの文としてまとめて書いて、句点を打っていく、という独特な文体は、ジャンキーの語りにリアリティをつけるためだったのでしょうか。(慣れると、それほど気にならなくなりました)
哲学というよりも、変な理屈(屁理屈?)を連発して、常に思考しつづける主人公の有り方は、案外正統派の私小説の流れを汲んでいるとも感じました。
本作の中には、いろんな受け止め方をして、反感や嫌悪を持つ読者がいてもおかしくはない内容も(言葉の表記なども含めて)あったかと思います。
全て意識的に書かれていて、普段は誰もが立ち止まらない場所に、あえてしっかりといちいち、主人公の「おれ」は立ち止まっていく、というのがこの作品です。
そういう点では、最後にあるように”ジャンキーのちんぴらのタワゴト”としてでは読み飛ばせないものがあったと思います。