起きようとしない男:その他の短篇

起きようとしない男:その他の短篇』

デイヴィッド・ロッジ(著)

/高儀進(訳)

(白水社)

 

 

 

1935年生まれのイギリスの作家デイヴィッド・ロッジの、全8話からなる短篇集です。

8話とも軽妙で面白かったのですが、表題作の『起きようとしない男』は特に良かったです。

寒くて凍えそうな冬の朝、温かいベッドからなかなか起き出せない主人公の気持ちが、痛切に理解できます。

快適な寝具から一歩でも足を踏み出せば、そこに待っているのは身を刺すような寒さだけではありません。

考えただけで嫌気がするような、現実世界の憂鬱な日常。

そこから目を逸らすために、主人公はこのまま「起きない」という選択をするのですが……。

シニカルなラストは、想像していたよりも怖かったです。