『家の中で迷子』
坂口恭平(著)
(『新潮』2017年12月号に掲載)
家の中にいる人物(がいったい誰なのかは、よくわからない)が、そこに違和感を感じているうちに、ふと4歳の頃のことを思い出し、そこからたちまち奇妙な時空間へとさ迷いこんでいく……というお話。
まるで夢の中の出来事のように、筋道が通らないことばかりが起き、不思議なことばかり言う人物たちが複数登場してきたりします。
読み始めてからすぐに、これはいったいどういうことが書きたくて書かれている小説なのだろうか? ということすら、考えることもなくなって、ただただ物語の主人公となっている人物と同じように、流されるままに流されてみて、本の中を漂っていました。
最後に、再び部屋に戻ってきてしまったので、それだけがなんとなく予想通り過ぎて、少しだけがっかりしました。
作者の坂口恭平さんは、建築家でもあります。
普段はきっちりとした設計図と向き合って、空間や構造物を取り扱っているであろうひとの頭の中で、こういう不思議な世界が展開しているのだと思うと、だいぶ面白いことだと感じました。