『13の理由』
ジェイ・アッシャー(著)
/武富博子(訳)
(講談社)
高校生のクレイ・ジェンセンは、ある日、自分宛ての小包を受け取る。
中には、番号のふられたカセットテープが7本。 再生してみると、自殺した同級生、ハンナ・ベイカーの声が流れはじめる。 ハンナの声は、自分の人生がどうして終わってしまったのか、その理由についてこれから話す、という。 ハンナは、クレイの同級生で、クレイが密かに想いを寄せていた女の子でもあった。 カセットテープのハンナは言う。ルールは簡単だと。 ”ルール1:テープを聞く。ルール2:次の人に回す” ハンナの送ったこのテープを聞くことになる人物は、13人。片面に一人ずつ、13人分の”理由”を吹き込んであるらしい。 そして、クレイもそのリストの中に、含まれていたのだ。 |
死んだはずの少女から(それも、ずっと好きだった女の子から)小包が届いて、それが彼女の死んだ理由の告白で、しかもその”理由”の中に自分が含まれているのかもしれない。
そんな狂おしい体験をすることになる少年の視点と、くだんのカセットテープを送り付けてきた少女の声の語りという二重奏で、物語は構成されています。
冒頭からラストまで、なんという緊張感の張り詰め方でしょうか。
アメリカのごく普通の高校生たちの日常が描かれているだけなのに、読み出したら、もうどうにも最後まで読みきらずにはいられませんでした。
少女の死の理由が、それほど単純ではなく、けれどしっかりと理解できる範疇にあることも、引き込まれてしまった理由の一つかもしれません。
この作品の素晴らしい所は、死んだ少女の単なる「復讐劇」などでは、決してないことです。
人が人と繋がっていく中で、真実の自分の姿が隠されていき、有もしない虚像としての自分ばかりが噂という形で広がり、膨らんでいってしまうという恐怖。その現実の中で怯えている少女は、実はものすごく救いを求めていて、この世界のどこかにはきっとまだ希望があると思いたがっていたように感じました。
本作は、出版と同時に脚光を浴びたというのではなく、徐々に口コミで、つまり本を読んだ人から人へ、その良さが伝えられていって、やがてベストセラーになったという経緯があります。
アメリカでドラマ化もされて、これも口コミで視聴者を獲得し、大ヒットになった。そういう作品なのです。
ドラマの方はまだ観てないですが、機会があれば、ぜひ観てみたいです。