『自動起床装置』
辺見庸(著)
(文藝春秋)
ぼくは、通信社の「宿直センター」で仮眠をとっている人たちを起こす「起こし屋」のアルバイトをしている。
バイト仲間の小野寺聡は、法学部の学生だが、かれが法律の専門書を手にしているところを、ぼくはみたことがなく、いつも「樹木」とか「眠り」に関する本ばかり読んでいる。 そんな聡の、「起こし」の仕事や「眠り」に対する態度は誠実で、かれは世界でも最高の起こし屋になるにちがいなかった。 ところが「宿直センター」に、「自動起床装置」なるものが導入されることになって……。 |
いままで当たり前に繰り返してきた”眠り、そして目覚める”ということの一連が、本作を読んでからはどうにも不可思議で謎めいたことのように思えてきました。
人はなんで眠るんだろう。そして、なんで、毎回ちゃんと起きれるんだろう?
この小説に登場してくる「起こし屋」なるアルバイトが本当に存在するのかどうかわかりませんが(きっと、どこかでは存在しているはず)「宿直センター」という、要するにただの宿直の社員が仮眠をとるだけの場所が、異界に繋がる空間のように思えてきて、面白かったです。