今週の20日、2016年夏の芥川賞・直木賞の候補作品の発表がありましたね。
ちなみに半年に一回、選考会があります。
よく両賞の違いがわからない人がいますが、私は芥川賞は「新人作家に送られる奨励賞」、直木賞は「がんばってコンスタントに書き続けたベテラン作家への功労賞」ととらえています。
■第155回芥川龍之介賞 候補作
収録雑誌 | 候補者・候補作品 | 略歴 |
新潮1月号 | 候補3回目
高橋弘希『短冊流し』(36) |
予備校講師でロックバンド活動をしている。2014年「指の骨」で第46回新潮新人賞を受賞 |
群像 2016年 06 月号 [雑誌] | 初候補!
崔実『ジニのパズル』(30) |
ジニのパズル
デビュー作ながら単行本もすでに出ている。雑誌掲載の写真は美人。 |
文學界2016年6月号 | 初候補!
村田沙耶香『コンビニ人間』(36) |
いまだにコンビニでバイトしている作家。2003年「授乳」で群像新人文学賞優秀作。『ギンイロノウタ』で野間文芸新人賞。『しろいろの街の、その骨の体温の』で三島賞。 |
文學界2016年3月号 | 候補5回目
山崎ナオコーラ『美しい距離』(37) |
現在、國學院大学兼任講師。2004年「人のセックスを笑うな」文藝賞、そして映画化。 |
文学ムック たべるのがおそい vol.1 | 初候補!
今村夏子『あひる』(36) |
広島出身。2010年「あたらしい娘」(のちに「こちらあみ子」に改題)で第26回太宰治賞を受賞。 |
★受賞作予想
話題性を考えると、作者の写真が美人だし、朝鮮学校について書かれた作品の内容の濃さと出来の良さから、「ジニのパズル」が有力。しかし、金正日の肖像画を扱ったテーマで、話題になると何かと作者に危険が及ぶのではないかとハラハラしている。妻によると新人賞としてはかなり面白い作品とのことだが、私にはところどころ文章力に疑問を感じたし、前半の退屈さや、自意識過剰な部分が、少し受け入れがたかった。が、書きたいこと、書くべきことを作者は書いたんだろうなと思った。
個人的には村田沙耶香が好きで、芥川賞をまだとっていないのかという印象。生活のリズムを保つのに作家になった今でもコンビニでバイトしているし、今回はついにそのテーマを書いたというので、作品次第だが受賞してほしい人物。
あとは今村夏子の「あひる」が異例の福岡の出版社、書肆侃侃房から出るという物珍しさで、受賞すれば地方の出版社も活性化するだろうし、山崎ナオコーラ(「人のセックスを笑うな」は秀作、文章力があると思っている)も何度もノミネートしているから、そろそろこの辺で、という事情もあるのだろうし、最近はロックバンド系の作家も流れにのっているから高橋弘希(読んだことがないが)もダークホース的な可能性もある。
以下直木賞は簡単に。
・伊東潤『天下人の茶』(文藝春秋)
・荻原浩『海の見える理髪店』(集英社)
・門井慶喜『家康、江戸を建てる』(祥伝社)
・原田マハ『暗幕のゲルニカ』(新潮社)
・湊かなえ『ポイズンドーター・ホーリーマザー』(光文社)
・米澤穂信『真実の10メートル手前』(東京創元社)