第124回文學界新人賞受賞作品

『レンファント』

田村広済(著)

(『文學界』2019年5月号に掲載)

 

重度の皮膚病を患う息子の育児に悩まされる、若き父親の苦悩を描いた作品。文章が読み易く、上手いなと思いました。

冒頭から終わりまで、構成がきちんと計算されて書かれている印象で、強かな企みに満ちた小説だったかな、と思います。

息子の皮膚病の描写が選考委員たちの評価を得ていました。レンファントというのは、皮膚病に処方されるステロイドの塗り薬のことです。

この手の薬の中では一番強力なものなので、最終的な手段であるとして、医者から父親が処方されるものです。

主人公の男は、妻よりも稼ぎがない為に育児休暇を取って息子の育児にかかりきりになります。

そんな一人の父親の内面の不安や鬱屈のようなものが、息子の皮膚疾患に象徴されているように読めて、不穏に満ちた作品です。

文章も展開も、ある一定の緊迫感を保ちながら常に抑えられていて、ともすれば書きすぎてしまいそうになったり、明るさを持ちすぎたりしそうになるところを、上手く調整していると感じました。これは、かなりな手練だと思いました。