『アリス殺し』

小林泰三(著)

(東京創元社)

 

『不思議の国のアリス』は、ちょっと奇妙な作品だ。子供用に書かれたお話であるにもかかわらず、長年にわたって多くの大人たちを魅了し続けている。不可解な魔力を持った名作と言えるのではないでしょうか。

その魅力の根底にあるものがなんなのか、なかなか言葉では説明がしづらいものでもあります。

本作『アリス殺し』は、その不可解な魔力的な魅力を存分に抽出し、濃縮還元した上で、全く新しい作品世界を築き上げていると思います。

不思議の国と現実世界は密接で奇妙な関係にあり、大学院生・栗栖川亜理が住む側の現実で起きた殺人事件は、アリスが住む不思議の国の殺人事件とリンクしています。事件は一つにとどまらず、やがて連続殺人事件へと発展し、かなりダークな展開をみせます。

終盤に用意された凄惨な処刑のシーンが、冒頭の蜥蜴とアリスの会話シーンと同じくらいの冗長さであったことで、ホラー的要素(暴力、死)がナンセンスなものに呑み込まれていくような感覚として受け止められました。

生と死、笑いと恐怖、現実と非現実が紙一重で絡まり合っている感じが、なんとも知れない後味を残す作品だったように思います。