『掃除婦のための手引き書』  ルシア・ベルリン(著)  岸本佐知子(訳)  (講談社)

 

短篇の作品集です。言葉のチョイスやテンポが面白く、才気を感じました。

実人生を投影した作品が多いようで、表題作である『掃除婦のための手引き書』もしかり。仕事を転々とした時代を持つ作者ならではのリアルでユーモラスな視点は、実にシュールでシニカル、そして洗練されています。

人生のある瞬間の悲しさやおかしさや煌めきなどといったものを、繊細な手裁きでスパスパ切り取りエッジの効いた言葉で再構築してちりばめた、というような印象の作品集。

あるところでは余りにも説明が少なく余韻に満ち満ちているために、そこに見えるのはぼんやりとした事件の輪郭でしかなかったりします。

が、多くを語りすぎないからこそ立ち現れてくる世界が、こちらを魅了してくれました。