『青いポポの果実』 三国美千子(著) (『新潮』2019年12月号)
10歳の多感な少女期の初恋(と言って良いのでしょう)の記憶を綴った物語。
こんなにも分かりにくく歪で淡いものが、ちゃんと小説として認められるのだな、ということにまず感動しました。
文章を丁寧に辿っていても、あえてボカされデフォルメされた文体は一抹の分かり難さ(謎)へと導きます。はっきりとした輪郭線のない、荒いデッサン画のような文体、と言えば良いのでしょうか。地の文に説明的な流れがほとんどなく、物語は読者の読解により芽生える想像力の世界で完結されて立ち上がっていく、といった感じです。
私はこれを決して美しい小説だとは言いたくないのですが、通読して、意味の完全に掴めなかった箇所も含めて、やたら気になる作品でした。