『異星の客』 ロバート・A・ハインライン(著) 井上一夫(訳) (創元SF文庫)
言わずと知れたSFの大家ハインラインの、ヒューゴー賞を受賞した長篇。
地球人の両親の間に生まれて火星人に育てられた青年が、全滅した火星探検船から救出されて地球にやってくるところからはじまる物語です。
人間社会が当たり前に構築している死生観や愛情関係等におけるモラル的なものを、火星人的視点から見つめ直すことによって、根底から揺さぶりをかけてきます(これは、ヒッピーやポリアモリストたちの思想とも繋がるところがあり、彼らに支持されているところでもあるようです)。
私個人としては、それでいてどこかしら(人間の)男性的な視点から完全に解放されてない気がしていて、そこが気になったのですが、水兄弟の考え方には何かしら惹かれるものもありました。
本書が書かれたのは1960年代ですが、多様な恋愛感が認められつつある現代にも通じるものがあり、そこに先駆性を感じます。
物語のストーリー自体はかなり単調(シンプル)ですが、登場人物たちのやり取りなどなどに、ハインラインらしいユーモアや愛情が溢れている一作だったとも思います。