『月まで三キロ』 伊与原新(著) (新潮社)
表題作の『月まで三キロ』を含め全6話からなる短篇集です。
『月まで三キロ』では、いきなり自殺を考えている男が主人公として登場します。正に死の淵のギリギリの場所に立っている男なのですが、彼の絶望も、彼を行きがかり上乗せてしまったタクシー運転手の男の悲しみも、よく伝わってきて切なかった。
月と地球の関係は、人間の親子の関係になぞらえられ、上手くまとまっていたと思います。
作品のそここに、さりげなく挿入される科学的知識が、本当にさりげないだけに、なかなかいいスパイスになっていて良かったです。