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『飛光』
日和聡子(著)
(『新潮』2019年2月号に掲載)
小説家であり、詩人でもある日和聡子さんの短篇小説です。
2人の子どもたちに”飛光”を見物させるために、単身赴任中の夫が知人の男性(後藤さん)に頼んで連れて行ってもらう事になり、妻であり子どもたちの母親である「わたし」は、自宅から子どもたちと後藤さんが連れ立って出かけていくのを見送り、その帰りを待つ、というお話。
“飛光”というのがよく分からないまでも、未確認飛行物体的な奇妙な光が出現する現象らしくて、恐らく小説中の創作物であるのでしょう。
「わたし」が、後藤さんに対して不思議なほどの不信感を抱いていて、その上、作中の至るところで、正体不明の「不吉」なものを予感させるちょっとした描写が入り込み、なんとなく何かあるのかな、という感じが終始漂います。
けれど、これといって事件らしい事件が起こらないので、これはいったいなんなんだろうと思っていると、終盤になって戦慄の全貌が仄かに見えはじめ、その時点になってようやく、そこまで書かれていたこと、読んできたことの中に含まれていたものの本当の姿が見えてきて、戦慄しました。
直接的な描写としては、なにも怖いことは書いていない。けれど怖い。そこが凄い。
かなりぞくりとする小説でした。