AX アックス

2018年本屋大賞ノミネート作品

『AX(アックス)』

伊坂幸太郎(著)

(角川書店)

 

 

凄腕の殺し屋「兜」

だが、昼間は文房具メーカーの営業の仕事をしていて、家では妻に頭があがらない。

高校生になる息子の克巳が生まれた頃から、実は殺し屋稼業から足を洗いたいと願ってきた兜だったが、実現していない。二十年近く、彼に仕事を仲介してくれている「医者」が、それを許さないのだ。

妻と息子をこよなく愛する殺し屋の、ほろ苦くもどこか物騒な日常が淡々と綴られていて、漫画(コミック)的な面白さがある作品だな、と思いました。

本作で登場するのは「兜」という名の殺し屋ですが、伊坂幸太郎さんの作品の中には、殺し屋シリーズともいうべき『グラスホッパー』『マリアビートル』などがあって、色んな名前の殺し屋(「鯨」とか「蝉」とか「檸檬」とか……)が出てきます。それぞれは単独で書かれていますが、伊坂幸太郎ワールドの中で、この”殺し屋業界”なるものは繋がっているようです。

”殺し屋”という現実感のない稼業に生きる男の日常は、やはりどこか現実感のない感じがするのですが、その現実感のなさに哀愁が漂っていて、ちょっと切ない気もしました。