第7回三島由紀夫賞受賞作品
『二百回忌』
笙野頼子(著)
(『笙野頼子三冠小説集』河出文庫 に収録)
「私」の父方の本家で行われる二百回忌では、死者が生者に混じって法事に参加する。
百年に一度くらいしか催されることのない二百回忌。 それがついに行われることになった、と知らせがきて、準備万端、出かけて行く「私」だった。 |
【感想】
読んでいて、こんなにヘンテコで楽しそうな(そして常識はずれな)法事なら、自分も参加してみたいな、とつい思ってしまいました。
本作は、1994年に三島賞を受賞した作品で、ということは、もう二十年も前に書かれた作品なわけですが、今読んでも全く斬新で、はじけた内容です。
この二百回忌においては、通常では重んじられる常識的なこととは、真逆なことをしてなければならない、というところがなにより素敵です。
法事という場は本来だと、昔からの仕来りとか、礼儀作法とか、常識として知っていないと恥をかくとかかかないとか、死者を弔うという本質的な目的とは無関係なところで気を遣うことが多く、どうも苦手なのですが、ここではそんなこと、気にしなくていいのです。
なんという自由さ。なんという幸福感でしょう。
「私」の語りで紡がれるこの物語を、私小説という感覚では読みませんでした。これは、珠玉のファンタジー小説だと、私は勝手に解釈しています。