『聖ミクラーシュの日』
青山七恵(著)
(『文藝』2017年春号に掲載)
主人公の「わたし」は、15年来の親友、美南子と二人で、チェコに旅行に来ていた。
しかし、そ日の朝になって、自らのルーズな性格がもとで、美南子と喧嘩別れをしてしまうことに。 そのため、見知らぬチェコの街を、ひとり観光してまわることになった「わたし」は、なかなか昼食をとるレストランも見つけられずにいた。 諦めかけていたが、ようやく理想通りの店にたどり着いた「わたし」。 ところがこの店で、思わぬ恐怖体験をしてしまうことに……。 |
青山七恵さんが、『文藝』に発表された短篇小説です。
短篇と言っても、なかなかに充実した内容で、とても面白かったです。
作品の中でも説明されていますが、聖ミクラーシュというのは、英語でいう聖ニコラス、つまりサンタクロースのことです。
物語の舞台になっているチェコでは、12月6日に「聖ミクラーシュの日」という伝統行事があって、この前日の5日の日には、聖ミクラーシュが天使と悪魔を連れて、子どものいる家々をまわっていくそうです。そこで、あらかじめ親たちから渡されていたお菓子なんかを、聖ミクラーシュが子どもたちに配る、ということのようです。
物語は、どうもルーズな性格の持ち主であるらしい主人公が、しっかり者の親友と別れて、ひとり行動をすることになる、12月5日の、チェコで体験した出来事が描かれています。
女同志の友情が、辛口なユーモアに包まれて、こんなにも素直に胸に飛び込んでくるなんて、さすがだな、とつくづく感じ入りました。