第7回大江健三郎賞受賞作品
『嵐のピクニック』
本谷有希子(著)
(講談社)
☆ 反抗期の少女と、優しくて真面目なピアノの先生。レッスンなど、はなからやる気もなかったが、先生が一瞬だけみせた狂気じみた行動がきっかけで、何故かやる気に……。―― 『アウトサイド』
☆部下に囲まれての、大事な会議の最中。キャリアウーマンの「私」は、ひたすら窓辺のカーテンの膨らみが、気になって落ち着かない。その膨らみの中に、何者かが潜んでいるという気がしてならないのだ。―― 『私は名前で呼んでる』 他、全13話からなる短篇集。 |
どの作品も、どこか奇妙奇天烈なものを秘めていて、心の奥底を、こちょこちょとくすぐられるような感覚がする、そんな短編集でした。
全体的な印象として、何とも言えない「キュート」な味わいもあり、エイミー・ベンダーの短篇集、『燃えるスカートの少女』を、思い出しました。
特に好きだったのは、三つ目の作品、『パプリカ次郎』です。
アクション映画の一場面よろしく、毎度現れて、市場の屋台をむちゃくちゃにしていく乱暴な一団がいて、パプリカ次郎は彼らに立ち向かっていくのですが、だいたい、”パプリカ次郎”なんてネーミングから既に変ですし、想像すると可愛らしく、妙にいじらしいと思えるキャラクターです。
第154回芥川賞を受賞した『異類婚姻譚』にも通じる”不思議世界”が、ここには詰まっているという気がしました。
【参考書籍】
『燃えるスカートの少女』
エイミー・ベンダー(著)