『ねこねこ』 小山田浩子(著) (『群像』2019年3月号に掲載)

 

短篇小説です。実体験を元に書かれているという気がします。

小さい我が子と遊ぶ近所の公園。そこで出会った野良猫(に違いないもの)たち。夫の実家で飼われている猫や、その夫の実家周辺に突然集まった鳥の大群とそれが撒き散らす大量の糞の話。とりとめのない義母とのやりとり。幼い娘の言動……。

全て、小さな世界での細やかな出来事であり、事件らしい事件も起こりません。けれどそこには奇妙な緊張感を持つリアルな手触りがあり、生きた人間の息遣いがあります。

それは「死」をも内包した、生き物としての存在のリアル感であり、このリアル感こそが読み手を引きつけている、そんな作品だったかと思います。