『ストレンジャー』
ミヤギフトシ(著)
(『文藝』2018年秋号に掲載)
ニューヨークの大学で写真を勉強している日本人の青年(ジャック)がはじめた、『Strangers』の企画。それは、知らない男たちと一緒に写った写真を、彼らの部屋で撮影し作品にするというもの。
場面場面が、切り取られたスナップ写真の連続を映し出したものでもあるようで、元来は小説とは異なる質感のものが、豊かな日本語で描写されている、といった感じ。
本作は、アーティストである著者自身の体験を元に書かれた作品であろうかと思います。
それだけに、小説の細部にはリアリティがあり、それは写真家が世界(対人なども含めて)に、どのような感情での対峙の仕方をしているのかとか、どのような手順からインスピレーションが生まれてくるのか、とかといったような、その分野に深く関わっていなければなかなか触れることのないものが、自然な手触りとして立ち現れているように受け止められました。
作品の内容には、セクシャルな問題も関わっていて、そこから生まれてくる孤独と、芸術家というものが抱えている孤独、そして人間本来が持っている孤独とが混ざり合い、静かに渦巻いていたように感じます。
外国の地で暮らす日本人のリアルな感覚もよく伝わってきました。