ガール・オン・ザ・トレイン(上) (講談社文庫)ガール・オン・ザ・トレイン(下) (講談社文庫)

 

 

 

 

『ガール・オン・ザ・トレイン』(上・下)

ポーラ・ホーキンズ(著)

/池田真紀子(訳)

(講談社文庫)

 

 離婚して友人の部屋に転がり込み、以来ずっと居候中のレイチェルは、酒に溺れ、肉体的にも精神的にもボロボロだった。

仕事はクビになり、無職の状態だったが、友人の手前、出勤するフリをしてロンドン行きの電車に乗り続ける日々。

途中、電車の窓から、一組のカップルの住む屋敷を眺め、彼らの幸福な生活を夢想することが、いつしか彼女の楽しみになっていた。(女はジェス、男はジェイソンと、勝手に名前まで付けていた)

彼らは、理想的なカップルに見えた。それはまるで、かつて幸福だった時代の、自分とトム(別れた夫)を思い出させた。

しかし、ある日、レイチェルは、ジェスが他の男といる様子を、車窓から見てしまい、衝撃を受ける。

 

本作は、三人の女性の独白から構成されています。

離婚により心身ともに傷つき本来の自分を見失った女、レイチェル

レイチェルが車窓から憧れの眼差しで眺めていたジェスこと、メガン

そして、レイチェルの夫のかつての浮気相手で、現在の妻である、アナ

三人が三様の闇を心に抱えていて、彼女たちは、やがて一つの事件に巻き込まれていきます。

レイチェルが酔っぱらっている間に、その重大な事件は起こっていて、記憶がないだけに何が起ったかさえ分からないのを、辿っていこうとするところに、独特のリアル感があります。

こうしたサスペンス仕立ての展開の面白さも魅力ですが、作品が三人の女たちの内面やその変化に重点を置いているので、この点の読みごたえも十分にありました。

それぞれの女(ガール)たちの独白には、それぞれの哀しみや怒り、恐れ、愛憎があり、赤裸々なだけに、その醜さや愚かさまでも残酷なくらい曝られていて、(特に、レイチェルは)グロテスクであり、また妙に可愛らしくもあります。

同名で映画化もされていて、実をいうと映画の方を先に観ましたが、小説には小説の良さがあり、ストーリーを知っていても楽しめました。