さよならを待つふたりのために (STAMP BOOKS)

『さよならを待つふたりのために』

ジョン・グリーン(著)

(岩波書店)

 

 

 

16歳のヘイゼルは、甲状腺がんが肺に転移していて、常に携帯用の酸素ボンベと共に、過ごさねばならない。

週一のサポートグループ(患者同士が病気の体験や気持ちを語りあう場所)に参加するようになって、オーガスタス(ガス)と出会う。彼は17歳で、1年半前から骨肉腫を患っている。

二人はすぐに打ち解けて、やがて真剣に愛し合うようになる。

 

「死」と隣り合わせ……というより、「死」がそれほど遠くない未来の現実として捉えられている少年と少女の純愛ストーリー。

こういう作品を気嫌う人もいるかも知れません。私も、読みだす前は、「死」を題材に感動を売りにしているようで、何となく反発を覚えていました。

けれど、読み始めて数行で、この考えは変わりました。

それは、主人公ヘイゼルのもの怖じしない語り口の中に、「死」や自らの病気を非常に冷静に受け止めているのが読み取れたからです。

作品は終始、ユーモアとシニカルに富んでいますが、日常的に訪れる痛みや恐怖の感情はしっかりと描かれ、ヘイゼルやガスが明るく振る舞えば振舞うほど、冷酷な運命の重みを感じます。

ヘイゼルの願いを叶える為に、ガスが計画したオランダ旅行をきっかけに、二人の関係がより親密になっていく展開も、非常に面白く読みました。

感動を売りにする作品は苦手ですが、本作はそんなものを売りにしているわけではない、と分かりました。

すばらしい作品でした。

映画版の『きっと、星のせいじゃない。』も観ましたが、こちらも原作に劣らず素晴しかったです。