『愛について語るときに我々の語ること』
レイモンド・カーヴァー(著)
/村上春樹(訳)
(中央公論新社)
表題作『愛について語るときに我々の語ること』を含む17作からなる短篇集です。
村上春樹さんが翻訳を手掛け、巻末に解題も書かれています。
カーヴァーの作品は初めて読んだのですが、説明を大幅に削ることによる効果を狙った作品が多く、中には意味の捉えにくいと感じたものもありました。
けれど、いきなり奇妙な「非日常感」を味わせてくれた『ダンスしないか?』や、事故で目覚めなくなった息子を想う母親の内面の緊迫に迫った『風呂』、ごく普通に見える男たちの不可思議な凶暴性を描く『出かけるって女たちに言ってくるよ』など、妙に頭にこびり付く作品もあって、完全に理解することだけが、読むことの全てではないのだと感じました。
カーヴァー自身の内包された「哀しみ」なのか、「退廃的」とまではいきませんが、家庭や社会生活に疲れきった人々の哀愁の気配がして、そこはかとなく物悲しいのですが、その物悲しさが、妙に心地よいという気もしました。
なお、巻末の村上春樹さんの解題は、とても分かりやすく丁寧で、カーヴァーを楽しむ手掛かりを幾つも授かりました。