綿矢りさ著
(文藝春秋出版「かわいそうだね?」に収録)
さかきちゃんの高校時代からの親友亜美ちゃんは、誰もが認める美人で、周囲からはその容姿ゆえに特別な存在として扱われてきた。そんな亜美ちゃんの隣で、いつも輝けない影のような存在であることを自覚していたさかきちゃんは、実は亜美ちゃんのことがずっと嫌いだった。それなのに、人気者で誰も放っておかない亜美ちゃんは、なぜかさかきちゃんにばかりくっついてきて、特別な友達として接してくる。鬱陶しくは思いながらも、亜美ちゃんのそばにいれば、学校カースト制の上位に君臨できるという得点を良しとしてなんとなく親友を続けていくさかきちゃん。高校卒業後も付き纏う亜美ちゃんを、なぜか簡単に振りほどくことができないのだった。 |
「勝手にふるえてろ」や、表題作である「かわいそうだね?」同様、やはり若い女子を読者対象に書かれた作品だと思います。
「かわいそうだね?」ほどの爽快感や読みごたえはないですが、十分面白い作品だと思います。
何よりも、二人の女たちの友情を、高校生時代の一過性的なスパンではなく、卒業して大学生になり、社会人になり、結婚という一大イベントを迎えるまでの中期的なスパンで描かれているので、時間の経過やそこで生きている人物たちの濃淡が浮かび上がっていて、結婚式の場面ではそれが効果的なラストを演出できるまで膨らんでいると思います。
一人の少女が成長して成功と衰退を経験するまでを描く「夢を与える」は、これよりもう少し長いスパンですが、綿矢さんは人物や背景を中長期的に捉えて描くことでがとても上手な書き手なんだと、この作品を読んで改めて思いました。
何気なく書かれている作品ではありますが、企みや整った構成がきちんとあって、安定した出来栄えに仕上がってます。