発表前から話題になっていた崔実さんの「ジニのパズル」と、どちらが受賞するかと思っていましたが、かねてより期待していた通り、村田沙耶香さんが受賞されて、妙にホッとしています(なにぶん、同世代なもので……)。

今回の受賞作品「コンビニ人間」もそうですが、過去に書かれていた数々の作品も素晴らしくて、これが初ノミネートだったことが信じられないくらいです。

村田さんは、売れっ子作家である今現在においてもコンビニ店員として働かれていて、そんな彼女が作家として成熟した視点で描いた「コンビニ人間」は、実際面白い作品です。僭越ながら、発表前に読書感想文を書いていますので、ご興味のある方は下記リンクをお読みください。

◆村田 沙耶香 著 「コンビニ人間」の読書感想はこちら

選考会の流れは、選考委員のひとり川上弘美氏によると、第一回目の投票で、「コンビニ人間」村田沙耶香著、「ジニのパズル」崔実著、「あひる」今村夏子著の三作品に絞られ、その後の協議で、一回目の投票から過半数の評価を得ていた「コンビニ人間」に決定した、ということだそうです。

「あひる」は未読なので、なんともいえませんが、「ジニのパズル」は朝鮮学校という特殊な環境、作者が(写真では)美人、微妙な独裁者の話題をセンセーショナルに取り扱っている、という点から、もしかしたら受賞の可能性もあるのでは、と考えていました。しかし、素人目に見ても、ところどころ文章力の欠如と思われる致命的な文章がいくつか散見されましたので、これが受賞につながらなかったのだと思います。

◆崔実 著 「ジニのパズル」の読書感想はこちら

他の芥川賞候補作品が気になる方は、下記のリンクからお進みください。

◆山崎 ナオコーラ 著  「美しい距離」の読書感想はこちら

◆高橋 弘希 著  「短冊流し」の読書感想はこちら

芥川賞を受賞されたということで、これから、村田沙耶香さんの他の作品が売れると思いますが、個人的にお勧めの作品をあげておきます。

授乳 (講談社文庫)② しろいろの街の、その骨の体温の (朝日文庫) ③ギンイロノウタ (新潮文庫) ④殺人出産

一番左の①「授乳」はデビュー作で、大賞ではなく群像新人賞優秀作です。短篇で、内容も家庭教師と女学生の話なので、万人受けすると思います。②は西加奈子さんおすすめ本で、単行本しかないので私はそれを買ったのですが、学校における階級(カースト)を扱った作品です。学校の人間関係に悩んでいる方にぜひ。③は個人的にすごいと思っている作品で、特に文学好きの方におすすめ。④は朝井リョウさんおすすめの本で、すこし設定のリアリティが薄いように感じられましたが、世にも奇妙な物語が好きな人におすすめです(笑)

※今回の芥川賞候補作の「あひる」ではありませんが、今村夏子さんの太宰治賞受賞作「こちらあみ子」の読書感想も一応下記にリンクしておきます。

◆今村夏子著 「こちらあみ子」の読書感想はこちら