『なにかが首のまわりに』

チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ(著)

くぼたのぞみ(訳) 

(河出文庫)

1977年にナイジェリア南部のエヌグに生まれたイボ民族出身の女性作家、アディーチェの短篇集です。

アフリカで生まれ育ち医学と薬学を学んだあと19歳で渡米して作家になった、という経歴の持ち主で、短篇の中には二つの土地の文化を生きる人間の姿が色濃く描かれたものが多くあります。

そもそも、アフリカ出身の作家の作品を読んだという記憶がなくて、その土地の文化や情景を詳細に伝える小説として真っ先に思い出せるのは、ディネーセンの『アフリカの日々』です。しかしこれは、アフリカで農場を経営する白人女性の視点から見たアフリカで、現地に生まれ育った人間としての視点を持つアディーチェの作品はまた違ったアフリカを見せてくれます。

内戦、人種差別、ジェンダー、様々な問題が登場人物たちの周りでひしめいていますが、それらに対峙する人物たちの心の動きは実に繊細で、個性があり、またユーモアや温もりに縁取られています。

そして、どの作品にも心を突き刺す言葉がどこかしらに潜んでいて、それが突然思わぬ箇所で顔を出すので、「ああやられた!」と、何度も叫びそうになりました。