『バズの中にはおよそシェア100万個分の栄養素が含まれている』

尾崎世界観(著)

(『文藝』2019年冬号)

 

昨年『文藝』に発表された尾崎世界観さんの小説。短篇と言っていい長さでしょうか。

リズミカルで軽くて、まるでクリープハイプ の歌の歌詞みたいにゴロを合わせて韻で遊んでいて、ちょっと不真面目な印象を受けるくらいにテンポがいい。

一見軽薄な印象を醸す文章ですが、これは意識的に客観視された、つまり作者の管理下にある軽薄さであり、本当に小説を書いている本人の孤独とか苛立ちとかやるせなさとかいったものは、もっとその外側にあるように感じます。

SNSという現代的なコミュニティの中での孤独、がテーマ(の一つ)だと思うのですが、尾崎世界観さんと微妙に近いようで別人らしい主人公の、そんなに切羽詰まってないけれどなんだかやり切れなさが滲んでくるというテイストで、後からジワジワくる温度感でした。個人的に尾崎さんのファンだからかも知れませんが、面白かったです。

出来れば次作は本格的な中篇小説を書いて欲しいかな。