『やすらい花』

古井由吉(著) 

(新潮社)

 

表題作を含む全八篇からなる短篇集です。

老いの境地にあって、男女の睦を(あるいは隔たりを)これほどに艶やかに怪しく書ける人はいるのでしょうか。

現実、夢、記憶、幻想、想念、様々な実態有るものと無いものとが混ざり合い、生の輪郭が死とも溶け合い、混沌としながら陰影を持って立ち現れてくる、そんな印象でした。

矛盾した言い草ですが、訥々とした饒舌さがある豊かな文章だと思います。

言葉が、情報の塊としてではなく、言霊を持った実態として、読むうちに胸に落ちてくるとそんな感じ、と言えばよいのでしょうか。

どうしたらこんな文章が書けるようになるのか、分かるまで何度でも読み解きたくなる文体。そういう言葉の集積である短篇の数々でした。