『幼な子の聖戦』

木村友祐(著)

(『すばる』2019年11月号に掲載)

 

地元の村長選をめぐり、不本意な理由から友人である候補者の妨害に関わらることになっていく男の物語。

閉塞感の中に閉じ込められ、ひたすら争っているのは、男の中に眠っている幼子のような無垢な魂です。

ただし、精神的にも肉体的にも疲弊し挫折感にも打ちのめされて未来への展望すら打ち砕かれている中年男の中に眠っている無垢な魂とは、虚(空)であり、聖も悪も受け入れてしまう諸刃のような危うい器です。

東北の田舎を舞台にしてますが、これは現在の日本そのものの縮図を描いているといえ、それ故にこの作品での疲弊感と閉塞感は、他人事であるという気はしませんでした。