『デッドライン』

千葉雅也(著)

(『新潮』2019年9月号に掲載)

 

地方から上京してきた大学院生の話で、彼は男しか恋愛対象にできない青年で、周囲にもカミングアウトしていて、論文を書いています。

彼の研究対象でもある哲学的な問いかけが、性の境界とか他者との関係性の問題、同性しか愛せないという自身の抱えている現実などと呼応(シンクロ)していて、境界(ライン)が一つのテーマになっていたのかな。

慣習や歴史や社会に押し付けられている境界(規則、概念、様々な線引き)への反抗であり、反抗でありながらも思慕でもあり恐れでもあるのだと思うのですが、自らがデッドラインになるということで辿り着いた境地が、少し分かりにかかった(難しかった)かな、とも感じました。

されど平熱で書かれている文章を読んでいると、様々な思考の種のようなものが浮かんできて新鮮でした。